はじめに

「江戸時代の浮世絵を、現代のカメラで再現できたら?」

そんなロマンを追いかけて、私は極寒の若洲海浜公園へと向かいました。狙うは、葛飾北斎の傑作『富嶽三十六景・深川万年橋下』を彷彿とさせる、東京ゲートブリッジの橋脚越しに望む富士山です。

1. タイムスケジュール:16時到着が正解だった理由

遠景の富士山撮影は、場所取りと明るさの変化への対応が命。今回は16時に現地入りしましたが、これが大正解でした。

16:20頃:現地着 
明るいうちに富士山と橋の重なり具合を確認し、ベストな三脚位置をミリ単位で調整します。

日中の若洲海浜公園から望む東京ゲートブリッジ。トラス構造の橋脚の間に、雪を冠した富士山が重なる現代の絶景構図。

16:30〜17:00:光の変化を楽しむ 
逆光の中、刻々と変わる空の色を楽しみながら、試し撮りを繰り返します。

雲の合間から強い夕日が差し込む東京ゲートブリッジと富士山のシルエット。波立つ海面が黄金色に輝く。

17:01:日没
太陽が地平線へ。強烈な光が地平線へ消えていく瞬間は、まさにクライマックスへの序曲でした。

日没寸前。強烈な光がだんだん地平線へ消えていく瞬間。東京ゲートブリッジと富士山のシルエットが濃くなっていく。

17:15〜:マジックアワー
空が深いオレンジに染まり、17:18にシャッターを切ったあの風景は、忘れられない思い出になりました。

日没後のマジックアワー。地平線が鮮やかなオレンジに染まり、富士山の稜線が際立つ。東京ゲートブリッジのライトアップが始まる直前の静寂。

17:45頃〜:ライトアップ点灯 
深い藍色の空に白金色の光が灯り、輝きを増す橋と対照的に、富士山の影は幻想的な薄墨色へ。

夜の帳が下りた若洲海浜公園から望む、白金色にライトアップされた東京ゲートブリッジ。トラス構造の合間に、薄墨色に溶けゆく幻想的な富士山のシルエットが浮かぶ。

東京ゲートブリッジと富士山の夕景の写真がAdobe Stockで販売中です。
夕暮れの東京ゲートブリッジと富士山のシルエット

2. 「現代の浮世絵」の完成

今回のテーマは、北斎の『深川万年橋下』へのオマージュです。

葛飾北斎の浮世絵『富嶽三十六景 深川万年橋下』。巨大な萬年橋の橋脚越しに富士山を望む大胆な構図。

葛飾北斎『富嶽三十六景・深川万年橋下』とは? 巨大な萬年橋の橋脚を大胆に配置し、その幾何学的な四角い枠の中に富士山を閉じ込めた構図です。

これを東京ゲートブリッジの複雑なトラス構造(通称:恐竜橋)で再現。江戸時代の木造橋が、現代の鋼鉄の橋へと姿を変えても、その間から覗く富士山の神々しさは変わりません。昼間の青い空から、夜の幻想的なライトアップへと移り変わる光の対比は、現代ならではの美しさでした。

3. 【実践編】失敗しない!撮影のための完全ガイド

「橋脚富士」をカメラに収めるために、事前に知っておくべき実用的な情報をまとめました。

撮影場所と構図の決め方

撮影は橋のたもとに広がる「若洲海浜公園」の海岸沿いから行います。

  • 場所選びが命: 
    海岸線のどこに立つかで、橋のトラス(三角形)の中に富士山がどう収まるかがミリ単位で変わります。16時過ぎに現地入りし、明るいうちに歩いてベストな角度を探しておくのが成功の秘訣です。

機材とマナー

  • 三脚の使用について: 
    公園内での三脚利用は可能ですが、芝生内への設置や、通路を塞ぐなど他の方の邪魔にならないよう十分配慮しましょう。
  • 強風対策(超重要!): 
    海沿いの風は想像以上に強力です。三脚があるからと安心せず、ペットボトル飲料などで重量を増したカバンを「重し(錘)」として吊るし、地面に固定する覚悟で挑みましょう。軽いカバンでは逆に風に煽られてブレの原因になります。

ライトアップの楽しみ方

富士山のシルエットが消えた後も、楽しみは続きます。

  • 深夜0時まで点灯: 
    東京ゲートブリッジは毎日日没から24時までライトアップされます。
  • 月替わりのカラー: 
    照明の色は月ごとに変わります。訪れるたびに異なる表情の「恐竜橋」に出会えるのも魅力です。
  • 注意点: 
    橋の上の遊歩道は三脚・一脚の使用が禁止されています。夜景をじっくり長秒露光で撮りたい場合は、必ず下の公園内から撮影しましょう。

季節を映す「和の色」:現代の恐竜橋に宿る江戸の感性

東京ゲートブリッジが夜に見せる表情、実は「和の色」をテーマに構成されています。月ごとに移り変わるライトアップは、日本人が古来より大切にしてきた季節の言葉で彩られているのです。

  • 1月:白金色(しろがねいろ) ─ 今月、私が撮影した時に輝いていたのは、清らかなこの色でした。
  • 12月:緋色(ひいろ)、4月:新緑色(しんりょくいろ)など、訪れる月によってガラリと印象が変わります。

国民の祝日や特別な日(ピンクリボンデーや世界患者安全の日など)には特別なカラーのライトアップになります。

空を彩るもう一つの主役:羽田へと続く光跡

若洲海浜公園は羽田空港の離着陸ルートに近いため、ゲートブリッジの上空を頻繁に飛行機が通過します。富士山との共演はもちろん、夜が深まってからは「飛行機の光跡」を狙うのも一つの楽しみです。

長秒露光(シャッター速度を数秒〜数十秒に設定)で撮影すると、夜空を横切る機体のライトが美しい光の線として写り込みます。

夜の東京ゲートブリッジ。トラス構造が白くライトアップされ、夜空の右側には羽田空港へ向かう飛行機の光跡が二筋の赤いラインとなって美しく描かれている。

【撮影のポイント】

  • 風の有無が成功を分ける: 
    このような長秒露光は、風のない穏やかな日が理想的です。
  • 強風時の対策: 
    強風下で光跡を狙う場合は、三脚のブレが致命的になります。改めて「重し」による徹底した安定対策が不可欠です。

4. アクセス&帰宅までの安心情報

冬の夜の若洲は非常に暗く、冷え込みます。事前の準備が「楽しかった」で終わるかどうかの分かれ道です。

公共交通機関でのアクセス

  • 新木場駅からバス: 
    JR新木場駅から都バス「若洲キャンプ場前」行きを利用します。
  • 時刻表の確認を: 
    帰りのバスの本数が限られているため、撮影に夢中になって乗り遅れないよう、事前に帰りの時刻表をチェックしておきましょう。
若洲キャンプ場前バス停の時刻表(2024年4月改正)。休日・日曜日の新木場駅行き最終バスは21:05。本数が少ないため確認必須。
※2026年1月撮影時の情報です。都営バスのダイヤは改正されることがあるため、行かれる際は必ず都営バス公式サイト等で最新の時刻表をご確認ください。

車での訪問

タイムズ若洲公園(旧・江東区立若洲公園駐車場)

時間を気にせず、マジックアワーから深夜のライトアップまでじっくり撮影したい方に最適です。特に冬場は、厳しい寒さや強風に備え、一度車内に戻って暖を取りながらシャッターチャンスを待てるのも、24時間出し入れ可能な駐車場ならではの利点です。

  • 入出庫可能時間: 24時間入出庫可
  • 料金(税込):
    • 00:00〜00:00(全日) 60分 400円(ただし最初の60分以降は60分 100円
    • 最大料金: 駐車後24時間 最大1,000円(繰り返し適用)
  • 支払い方法: 現金だけでなく、クレジットカード、電子マネー、QRコード決済にも対応しており便利です。

東京都立若洲海浜公園駐車場

ゲートブリッジに近いですが、夜間の利用には注意が必要です。

  • 利用時間: 
    6時から22時まで(※22時を過ぎると翌朝まで出庫できません)
  • 料金: 
    入場後1時間400円、以降1時間100円、当日最大1,000円。

かつては1回500円でしたが、現在はタイムズが運営しており料金体系が変わっています。それでも最大1,000円で24時間出し入れできるのは、夜景撮影組には本当にありがたい存在です。

安全と最強の防寒対策

  • 風速8mの極寒: 
    冬の海沿いは遮るものがなく、風速8mクラスの強風が吹き抜ける時もあります。
  • 「やりすぎ」な防寒を: 
    風を通さない厚手のダウン、手袋、背中に貼るカイロは必須装備。じっと立って待つ撮影は、動いている時よりも体感温度が急激に下がります。体調と相談し、無理だと感じたら早めに切り上げる勇気も大切です。
  • 足元の安全: 
    日没後はかなり暗くなります。三脚の設置や移動のために、手元・足元を照らす懐中電灯(ヘッドライトも可)を持参しましょう。

まとめ

寒さの中、シャッターを切り、強風に耐えて手に入れた17:18のあの一枚。 江戸の絵師が見た景色を現代の東京で追いかける旅は、極寒で過酷でしたが最高の体験でした。

東京ゲートブリッジは月毎にライトアップの色が変わります。あなたも、自分だけの「現代の浮世絵」を探しに、若洲へ出かけてみませんか?

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