この記事は「都内庭園フォト散歩シリーズ」の第2弾です。
⇒ 前回の記事はこちら:「六義園フォト散歩|新緑に包まれる庭園と和の風景を撮る春の一日」
水辺の名園「清澄庭園」で、リフレクション写真を追う
東京都心にありながら、静けさと和の趣に包まれる清澄庭園。今回はこの庭園で、水面に映る風景=リフレクションをテーマに撮影を行いました。春の新緑に包まれた庭園で、光の向きや風の動きに注意しながら狙った構図をご紹介します。
清澄庭園について
歴史と概要
清澄庭園は、もともと江戸時代に造られた屋敷の庭が始まりとされています。その後、明治時代に三菱財閥の創業者・岩崎彌太郎がこの土地を取得し、「深川親睦園」という庭園を作りました。社員の交流やお客さまの接待のために使われていたそうです。
庭の中心には、隅田川の水を引いた「大泉水」という大きな池があり、全国から集めた名石や築山などが配置されています。明治時代の庭園らしい、ぐるっと歩いて楽しむ「回遊式庭園」として整えられました。
関東大震災のあと、岩崎家から東京市に土地の一部が寄付され、「清澄庭園」として整備されました。昭和7年(1932年)には公園として一般公開され、昭和54年(1979年)には東京都の名勝にも指定されています。
また、大震災や戦争の際には、避難場所として多くの人々の命を守った場所でもあります。
季節ごとの見どころがある清澄庭園
清澄庭園は、四季折々の自然の移ろいを楽しめる庭園として知られています。春から初夏にかけては、青々とした新緑が園内を包み込み、池の水面には木々の鮮やかな緑が美しく映し出されます。
特に5月下旬から6月上旬にかけては、「花菖蒲(ハナショウブ)」が見頃を迎えます。清澄庭園では、日本伝統の江戸系ハナショウブが群生し、白・ピンク・青・紫・複色など、多彩な花色が庭園の風景に彩りを添えます。この時期にはイベント「花菖蒲と遊ぶ」も開催され、涼亭での展示や演奏会なども行われます。
秋には紅葉が園内を深い赤や黄金色に染め、冬には静かな空気の中で落葉樹の枝ぶりが趣を添えます。どの季節も異なる表情が楽しめるため、訪れるたびに新たな魅力と出会える場所です。
アクセス情報
- 所在地:東京都江東区清澄3-3-9
- アクセス方法:
電車:東京メトロ半蔵門線・都営大江戸線「清澄白河駅」から徒歩約3分
バス:都営バス「清澄庭園前」下車すぐ - 開園時間:9:00〜17:00(最終入園は16:30まで)
- 休園日:年末年始(12月29日~1月1日)
- 入園料:
一般:150円
65歳以上:70円
小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料
※上記は2025年5月時点の情報(変更の可能性あり。公式サイトでご確認ください)
清澄庭園(東京都公園協会)公式サイト
リフレクション写真について
リフレクション写真について、その魅力と撮影のポイントをご紹介します。
リフレクション写真とは
「水面」「ガラス」「鏡」などに映り込んだ被写体(建物・人物・風景など)を利用して撮影された写真のことです。反射を活かすことで、幻想的・ドラマチック・対称的な表現が可能になります。
リフレクション写真の撮影のポイント
水面に景色を映し込む「リフレクション写真」は、光や風の影響を大きく受けます。以下のようなポイントを意識することで、美しく仕上げることができます。
- 風のない穏やかな日を狙う(水面が波立たない日がベスト)
- 構図はローアングル気味に。水面を広く入れることで、リフレクションの存在感が引き立ちます
※奥行がある場合は、ローアングルでなくてもリフレクション写真は撮影できます。 - 絞り(F値)はF8〜F11程度に設定し、全体にピントが合うようにする
- ISOは低めに(ISO100〜400)設定し、ノイズを抑える
- 主題と映り込みを上下で均等に配置する「二分割構図」を意識する
- 明暗差が大きすぎないように露出を調整する(特に逆光時)
※水面が小さく波立っているときは、三脚を使って20〜30秒の長秒撮影が有効ですが、清澄庭園では三脚の使用はできません。今回は手持ちでの撮影を工夫しました
順光と逆光のリフレクションの撮り比べ
順光での撮影
色と形がくっきり映る王道スタイルの順光。太陽の光が正面から当たる順光条件で撮影したものになります。緑の木々や建物が水面に鮮やかに反射しており、非常に見やすい構図です。
①枯滝前から鶴島を望む | 鏡のような水面が魅せる風景
青空と島の緑が水面に鮮やかに映り込む、順光リフレクション構図。ローアングルからの撮影で、静けさと奥行きのある画面に仕上がっています。午前中の早い時間の穏やかな光が差し込む時間帯で撮影するのがおすすめです。

②磯渡りと五月紅紅葉 | 木陰から狙う鮮やかなアクセント
木陰からの撮影ですが、太陽光は順光方向からしっかり当たっており、赤い五月紅紅葉と緑の木々、水面の反射が鮮明に写り込んでいます。明暗のコントラストが構図にメリハリを与えています。

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③大正記念館と大磯渡り | 建築と自然が調和する一枚
庭園の中でも建物のスケール感がある大正記念館を入れた風景。木陰からの撮影ですが順光のため、緑の風景などの反射が水面に出ています。背景のビルも映り込む、都会の庭園らしいカットになりました。

④松島と涼亭を望む | 庭園建築と水面の競演
多層塔と涼亭を1枚におさめた広がりのある構図。やや波があったものの、順光の光で建物のディテールが映えます。庭園建築と自然のリフレクションを対比させたいときに最適です。

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⑤長瀞峡の石橋 | 静かな水面に包まれた和の情景
橋の形と水面の映り込みが対称になる、リフレクション撮影にぴったりの場所。順光のため、木々の緑が水面にしっかりと写り込んでいます。風がなければ特におすすめです。

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⑥大磯渡りと石橋 | 岩の質感と緑が際立つ
大胆に組まれた岩とその間にかかる石橋。順光のもとで、木々の鮮やかな色彩が水面に反射し、立体感と奥行きを演出しています。被写体の力強さが際立つ構図になりました。

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逆光での撮影
淡い映り込みとドラマチックな雰囲気に仕上がる逆光。逆光下では、水面の反射は柔らかく淡くなる一方で、シルエットや空気感が強調されます。明暗差のバランスを見ながら撮ることで、趣ある写真に仕上がります。
⑦雪見燈籠と富士山側の眺め | 緑と和の風景の静寂な風景
雪見燈籠を前景に、奥に富士山方向の緑が見える構図です。逆光や風があったため、水面の反射は淡く、奥行きと空気感を感じさせる仕上がりになります。風が穏やかな日がおすすめです。

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⑧涼亭・多層塔・雪見燈籠 | 広がりと静けさを収める
涼亭から塔、雪見燈籠までを見渡す構図です。逆光で撮影しているため、空の青さが抜けた感じになりましたが、その分“静けさ”や“風景の空気感”が画面に広がるカットになりました。

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光の違いでここまで変わる比較表
光の向き | 映り込みの鮮明さ | 雰囲気 | 撮りやすさ |
---|---|---|---|
順光 | はっきり映る | 明るく鮮やか | ◎ |
逆光 | 柔らかく淡い | 落ち着き・ドラマ性 | △ |
撮影に便利なアプリ「LightTrac」
アプリで順光の時間帯をチェック
リフレクション撮影では、「いつ光がどの方向から差し込むか」太陽の位置を読むのが非常に重要。今回の撮影でも活用したのが、太陽の位置を地図上で可視化できるアプリ「LightTrac(ライトトラック)」です。
アプリ内の赤線は太陽光の方向を示し、黄色は日の出方向、青は日の入り方向を示しています。この画面から、5月13日午前11:25の時点から順光になる角度を事前に確認して撮影に臨みました。

LightTracの活用ポイント
- 地図上で任意の場所と時間を指定して、太陽の位置や高度を確認できる
- 日陰になる時間帯や、順光・逆光のベストタイミングがわかる
- 撮影スポットの事前調査や、旅行先での計画にも最適
アプリ名:LightTrac(iOS / Android対応)買い切り型の有料アプリですが、風景・建築・庭園写真を撮る方には特におすすめです。
まとめ
清澄庭園のような水辺の庭園では、光の向き・風の有無・水面の状態がリフレクション写真の仕上がりに直結します。順光でのクリアな反射も良し、逆光での情緒ある表現も良し。季節や時間帯を変えて何度も訪れたくなる、そんな撮影の楽しさを感じられる場所です。
※掲載写真についてはこちらをご覧ください。