縮景園について

広島の中心にある歴史ある庭園
縮景園(しゅっけいえん)は、広島市中心部にある歴史ある日本庭園で、1620年(元和6年)、広島藩主・浅野長晟によって築かれました。作庭を手がけたのは、茶人としても知られる家老の上田宗箇です。
庭園の名前「縮景園」は、儒学者・林羅山の詩にある「海山をその地に縮め…」という言葉に由来し、中国の名勝を凝縮したような風景美が特徴とされています。
園内の中央には「濯纓池(たくえいち)」と呼ばれる大きな池があり、京橋川からの淡水と海水が混じる汽水池(きすいいけ)になっています。水質がやや塩分を含んでいるため、コイのほかにボラなどの海水魚が泳いでいるのも、日本庭園では珍しい光景です。

戦火や原爆での被害を乗り越え、復旧には約30年がかかりましたが、現在は名勝として四季折々の風景が楽しめる静かな癒しの場所となっています。春の桜や桃、新緑の夏、紅葉の秋、そして梅や椿が咲く冬と、一年を通じて多彩な自然の表情に出会えます。
縮景園の案内図
入り口にありました案内図です。少し見にくいですが、濯纓池の中には、大小14個の島が浮かんでいます。その中でも「鶴島」や「亀島」といった島は、長寿や吉祥を表す縁起のよい名前が付けられています。島には松が植えられていて、一年中緑を絶やさず、永遠の若さや長寿を象徴する意味があるようです。

縮景園へのアクセス・基本情報
- 所在地:〒730-0014 広島県広島市中区上幟町2-11
- アクセス方法:
JR広島駅から徒歩約15分
駅から市街地を歩いてアクセス可能です。
路面電車をご利用の場合
JR広島駅南口Aホームの1・2・6番乗り場から乗車し、「八丁堀」で白島線に乗り換え、「縮景園前」電停で下車。
バスをご利用の場合
JR広島駅新幹線口から「オレンジルート」または「レモンルート」のバスに乗車し、「県立美術館前(縮景園前)」停留所で下車。 - 開園時間:
3月16日~9月15日:9:00~18:00(最終入園は17:30まで)
9月16日~3月15日:9:00~17:00(最終入園は16:30まで) - 休園日:毎年12月29日~12月31日
- 入園料:
一般:350円
大学生:150円
高校生以下および65歳以上:無料(年齢確認ができる公的証明書の提示が必要) - 備考
「みどりの日(5月4日)」と「文化の日(11月3日)」は、無料で入園できます。
駐車場の台数が限られているため、公共交通機関の利用が推奨されています。
※上記は2025年5月時点の情報(変更の可能性あり。公式サイトでご確認ください)
縮景園 公式サイト
曇りの日の縮景園で撮影する魅力
曇りの日だからこそやわらかい光で撮影できる風景
曇り空の下でもやわらかな光を感じながら撮影できる縮景園の魅力。園内には、池や橋のリフレクションスポットをはじめ、歴史ある和風建築や苔のある地面、咲き始めた季節の花々など、曇りの日でも撮影できる被写体が多くあります。
今回は、濯纓池と跨虹橋の水辺の風景をはじめ、悠々亭や明月亭などの趣ある建物、迎暉峰(げいきほう)から見渡す庭園全体の眺め、さらに苔やキショウブ、ヤマボウシといった自然をクローズアップで切り取った写真もご紹介します。
撮影に訪れた日はやや曇天でしたが、やわらかい光のおかげで影が少なく、色合いやディテールを表現できるシーンがいくつもありました。
木々の緑に包まれるように建つ「悠々亭」を撮影

曇り空で雲に表情があったため、あえて空を構図に取り入れて撮影しています。
緑に囲まれた茅葺き屋根の「悠々亭」が、曇りのやわらかい光の中で、静けさと日本庭園らしい趣を感じさせる一枚となりました。
白い石造りの「跨虹橋」を、背景の新緑と組み合わせて撮影

曇りの日はコントラストが控えめになりますが、この場面では白い橋と背景の緑の対比を活かすことで、跨虹橋の存在感を際立たせるように撮影しました。光がやわらかいため、石の質感や橋のカーブも自然に表現できました。石橋の形が水面に映りこんで、趣きのある風景になりました。
「明月亭」のたたずまいに青もみじを重ねるように構図を工夫

曇り空で空が白く飛びやすい日だったため、このカットでは空をフレームから外し、画面いっぱいに建物を収める構図にしました。
明月亭の前にあった青もみじを前景として取り入れることで、木の質感と新緑のコントラストが際立ち、和の風情を強調しています。
「迎暉峰」から見下ろす縮景園の景色

園内で最も見晴らしの良いスポットのひとつ、迎暉峰(げいきほう)からは、濯纓池を中心に広がる庭園のほぼ全体像を見渡すことができます。この写真では、広がりを活かすために18mmのレンズで構図を取り、建物や橋、木々の立体感が伝わるよう意識して撮影しました。曇りの日でも空が明るすぎないため、庭園をバランスよく写せることができました。
茅葺き屋根の独特な形が印象的な「看花榻(かんかとう)」

園内を歩いていると特徴的な茅葺き屋根の看花榻(かんかとう)がありました。そのユニークな形に惹かれて思わずカメラを向けました。
庭園の自然と、奥に見える現代的な建物との対比もおもしろく、縮景園が都市の中にあることを改めて感じさせてくれる一枚です。
銀河渓のほとりに咲いていたキショウブ

銀河渓の近くに咲いていたキショウブを撮影しました。曇りの日は光が拡散されるため、花の色が飛ばず、ディテールまでしっかりと表現できます。
黄色の鮮やかさを保ちながら、花びらの質感や葉のラインを自然に捉えることができました。
小さな石灯籠と、背景に咲く青紫の菖蒲

石灯籠を主役に、背景に咲く青紫の菖蒲を組み合わせて撮影しました。曇り空のやわらかな光のおかげで、石の質感も柔らかく写り、花の色も落ち着いたトーンで自然に映ります。
和の風情の中に、彩りをそっと添えるような一枚に仕上がりました。
シランの花にピントを合わせ、背景をぼかすことで奥行きを表現

園内の道端に咲いていたシランの花を、前景にピントを合わせて、背景をぼかすことで奥行き感を出す構図で撮影しました。
コピースペース(空白部分)を意識することで、何かの用途に使われることを想定しています。
曇り空のやわらかな光が、花の鮮やかさと質感を自然に引き出してくれました。
明月亭の薄暗い木陰のそばに咲いていたヤマボウシ

明月亭の近くで見かけたヤマボウシの花。周囲は木々に覆われて光が届きにくい場所でしたが、F8・ISO100・1/125秒の設定で撮影しました。
曇りの日ならではのやわらかな光に助けられ、編集では明るさや彩度を調整することで、花びらのやさしいピンクと葉の緑が自然に映えるよう仕上げています。
クローズアップで捉えた苔の質感

園内の地面に広がっていた苔を、濯纓池の水面を背景に取り入れながら、ローアングルでクローズアップしました。
曇り空のやさしい光が苔にまんべんなく当たることで、緑の色合いや細かな質感が柔らかく浮かび上がりました。
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曇りの日に意識したカメラ設定と撮影ポイント
設定の基本(風景撮影を想定)
- F値:F8〜F11(風景全体にピントを合わせる)
- ISO:100〜400(ノイズを抑えなるべく低い設定にする)
- シャッタースピード:1/125〜1/200の間で撮影。
- ホワイトバランス:曇天(Cloudy)またはオートで調整
被写体にあわせた柔軟な設定調整も重要
- 絞り(F値)やシャッタースピードは、被写体によって使い分けるのがベスト
- 花など背景をぼかしたいときはF2.8〜F4の開放気味の設定にするとでやわらかい表現になります。
- 動きのある被写体、風に揺れる葉などは、シャッタースピードを速く設定してブレを防止する

被写体にあわせて設定を調整するのも曇りの日の撮影では重要です。
この写真では、背景をやわらかくぼかすためにF2.8〜F4の開放気味で撮影し、葉が風で揺れていたためシャッタースピードを速めにしてブレを防止しています。
曇りの日は花の撮影にも適している
- 曇り空は「光が拡散されてやわらかくなる」ため、花の色彩が飛ばずにしっとりと再現できる
- ハイライトが抑えられ、繊細な色合いやディテールをきれいに記録しやすい
- 反射が少ないため、白い花や明るい色の花も撮りやすい

曇りの日は光が拡散されるため、花の色が飛ばず、しっとりと自然なトーンで写すことができます。この写真のように、淡い色の花でもハイライトが抑えられ、ディテールまできれいに再現できます。
反射も少ないため、明るい色の花も柔らかく撮影しやすいのが曇りの日の魅力です。
構図の工夫
- 空を入れない構図
白飛びを避けるため、空をフレームから外す
新緑の木々、石灯籠、苔や水面のリフレクションなどにフォーカスを当てる
曇天光でディテールが柔らかく表現できる - あえて曇り空を取り入れる構図
雲のグラデーションや重なりがあるときは「空を主役に」する
風があまりなく、水面に映る雲の模様や、広がりのある風景で静寂のイメージを演出する
和風建築物や松のシルエットと組み合わせることで“日本的情緒”を表現できる
雲が立体感を持っていたり、低く垂れこめている場合は、あえて空を広く入れることで「曇り独特の風景」を写真に収めることができます。
また、濃淡を活かしたモノトーン風の演出も可能です。

この写真では、曇り空の白飛びを避けるために空をフレームから外し、新緑の木々と池を主体にした構図を選びました。曇天のやわらかい自然光のおかげで、木々のディテールや色合いも柔らかく表現できています。
また、水面には草木の緑などのリフレクションが穏やかに映り込み、曇りの日ならではの落ち着いた雰囲気を引き出すことができました。
曇りの日の撮影で気をつけたいポイント
- 空が白く飛びやすい
▼注意点:
曇り空はのっぺりと白く写ることが多く、空にディテールが出にくいため白飛びしやすくなります。
▼対策:
露出補正をマイナスにして空の白飛びを防ぐ - 全体的に暗く、眠たい(コントラストが弱い)
▼注意点:
曇りの時の光はフラットで陰影が少ないため、立体感に欠ける写真になりやすい
▼対策:
撮影時にコントラストを意識した構図にする(前景・中景・背景の順に暗い被写体を置く)
撮影後、Lightroomなどで「コントラスト」「黒レベル」「明瞭度」を調整して立体感を後から補正する - 色が沈みがち(彩度が低く見える)
▼注意点:
特に緑や花などの色彩が良くみえない。
▼対策:
撮影時に明るめに撮影して、Lightroomで「自然な彩度」を+10~20程度調整する - リフレクションを撮影する時に注意
▼注意点:
風が強いと水面が揺れて映り込みが崩れる
▼対策:
風の少ない時間帯(風の止み間)を狙う
※リフレクションが映らないときは、主題を切り替える柔軟さも大事です。 - 天候の変化に注意(雨や霧などのリスク)
▼注意点:
曇天の場合、天候が急に変わることもあるので、機材が濡れる可能性もあります。
▼対策:
レンズやカメラにレインカバーやタオルを常備する

曇りの日は、空の明るさに引っ張られて全体の露出が上がり、空が白く飛んでしまうことがあります。さらに、自然光が弱いためコントラストも低くなり、写真全体が暗く、やや眠たい印象になりがちです。水面のリフレクションも暗く沈んだ雰囲気になります。
この写真では、手前の島から奥の木々へと視線が流れる構図の中で、コントラストを意識して立体感が出るように撮影しました。
Lightroomの編集では、露光量、シャドウ、黒レベルを持ち上げ、彩度も調整して緑の鮮やかさを引き出しています。
画像編集を始めたい方におすすめ!
Creative Cloud フォトプランLightroomで曇りの日の写真を明るく仕上げる
RAW形式で撮影しておこう
- 曇りの日は露出が不安定になりやすく、明るさや色の補正が必要になる場面が多い
- JPEGよりもRAW形式の方が「明るさ」「ホワイトバランス」「シャドウ・ハイライト」などの調整幅が大きく、画質を保ったまま補正しやすい
- Lightroomなどの現像ソフトを使う前提なら、RAWでの撮影が安心です
ワンポイント:
RAWで撮った写真は画像編集に適しているため、補正をすることでしっかり仕上がります
基本補正のポイント
- 露光量:
写真全体を明るくしたいので、スライダーを右に+0.3〜0.7程度調整します - ハイライト:
明るい部分を調整するため、スライダーを左に調整して明るさを抑えます。右に調整していくと白飛びしていきます - シャドウ:
暗い部分を調整するため、暗部の情報を引き出すためスライダーを右に調整して明るくします - 白レベル:
写真の最も明るい部分を調整するため、明るくしたい場合はスライダーを右に調整します - 黒レベル:
写真の最も暗い部分を調整するため、明るくしたい場合はスライダーを右に調整します
色の調整
- テクスチャ:
ディテールなどを強調できるので、立体感を出すことができます。スライダーを右に調整することで立体的に見えます - 明瞭度:
中間調のコントラストとシャープを調整します。右に調整するとディテールが鮮明になり、左に調整するとしっとりとした雰囲気になります。※明瞭度を上げすぎるとノイズが出るので、注意してください。 - 自然な彩度:
スライダーを右に+10〜+20程度調整します
ビフォー・アフターの写真例
RAW形式の画像を使って、Lightroomで基本補正、色の調整をしたビフォーとアフターの写真になります。
ビフォー

アフター

Lightroomの設定は以下になります。
露光量:+0.70
コントラスト:+4
ハイライト:ー80
シャドウ:+72
白レベル:+10
黒レベル:+23
テクスチャ:+7
明瞭度:0
かすみの除去:0
自然の彩度:+15
彩度:+1
まとめ
曇りの日ならではの庭園写真を楽しもう
曇りの日は、晴天とは違った落ち着きのあるトーンと、やわらかな光による雰囲気が魅力です。
庭園の緑や花々、木の質感などが均一に照らされ、自然な色合いで撮影できるため、構図や露出に工夫を加え、あとから編集で仕上げていく“曇りの日ならでは”の作品づくりを意識するのがおすすめです。
なお、筆者が訪れた日は外国人観光客が非常に多く、体感では9割近くを占めていました。
外国人観光客が訪れる観光スポットであることを実感しつつ、撮影時は人の流れを見ながら構図を調整しました。
曇りの日をチャンスに変えて、庭園撮影をもっと楽しんでみてはいかがでしょうか。
※写真内に写り込んだ人物については、肖像権への配慮のため一部加工を行っています。
※掲載写真についてはこちらをご覧ください。